名物の自転車ろくろ 笠間高校がイベントなどで活用(茨城・笠間市)
自転車ろくろを稼働させる笠間高生(左)。黄色い自転車のペダルを踏むと、手前の回転台が回る

 県立笠間高校の生徒たちが、自転車ろくろというユニークな機材を介して、地域との交流を深めている。

 自転車ろくろは、自転車と、陶芸で粘土を成形する際に使う道具のろくろを合体させたもの。2人1組で作業するのが基本で、1人は自転車のサドルに座ってペダルをこぐ。すると、チェーンやベルトを介してろくろに動力が伝わり、回転台が回る。もう1人が、回転台の上に乗る粘土を成形するという流れ。

 10月7~9日に笠間市の笠間芸術の森公園で開かれたイベント「笠間浪漫(ろまん)」には、同校の生徒ら10人ほどが、3台の自転車ろくろと共に参加した。笠間浪漫の目的は、同市の魅力発信。同市の魅力の代表格といえる陶芸に遊び心を加えた自転車ろくろは、多く人の感心を引いた。体験希望者の指導に当たった同校2年の平沢都煌さんと町田淳ノ介さんは、「楽しんでもらえて良かった」とよろこんだ。

 

 最初の自転車ろくろが作られたのは10年以上前。地元の陶芸家・藤本均さん(72)と自転車店主・大嶋元則さん(73)が地域イベントを企画したのが始まり。イベントは、今でいうマルシェ。藤本さんは、「“陶芸の僕”と“自転車の大嶋さん”がいたから、『それじゃ自転車ろくろを作ろうとなっただけ』」と笑う。そのイベントには、笠間高校の生徒たちも関わっていて、笠間高校に自転車ろくろを譲ることになった。

 その後、同校は、同校が関わる地域イベントには必ずといっていいほど、自転車ろくろを持ち込むようになり、同校の名物になった。同校の教諭・佐藤瑞季さん(30)は、「使い勝手もいい。本物のろくろはとても重い上に、電気も必要だから」。

 

 先日の笠間浪漫は、自転車ろくろの3号機のデビューの機会でもあった。3号機は、一部が折りたたみ式で機動性に富む。

 3号機は、同校が平成30年から取り組み始めた「総合的な探求の時間」という特別授業をきっかけに完成した。同授業は、地域との関わりなどの幅広い内容をテーマにして、探求していくというもの。テーマの一つに自転車ろくろを通したコミュニケーションというものが加わり、校外から藤本さん、大嶋さんや、アルミ加工会社を営む太田盛夫さん(73)らが関わるようになって、「やったるか」という気分になった3人。

 ただ、今回のイベントで一番目立つところに設置されたのは、もう一つの、2号機だ。2号機は昨年、同校の取り組みとは別に、藤本さんらが、独自に作り上げたもの。実際に動く車輪が付いていて、専用のレールや平らな地面の上であれば進むことができるのだ。つまり、移動しながらろくろ作業ができるのだ。笠間浪漫でも、それが実演された。

 大嶋さんは、「『何のために?』だなんて聞いてはだめだよ」と笑った。単なる遊び心。でも、そこからすばらしいものが生まれることは珍しくないんだというのが、大嶋さんらの持論だ。

 

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